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小林 憲明SIPスマートバイオ産業・農業基盤技術
プログラムディレクター

ukabisで「思い」をつなぎ、食の未来を変えよう

ukabisとは何か。どんなことができるのか。2018年度から中心となってプロジェクトを推進してきたプログラムディレクターの小林憲明が、食に関わるさまざまな方々に、ukabisの誕生を熱く語ります。

013つの食のサステナビリティ(持続可能性)が変革のカギ

いま、日本の食料自給率はカロリーベースで40%を切り、担い手の高齢化や耕作放棄地の拡大が続いています。今も続くコロナ禍の中、日々の生活を支える基盤を失っている方々が増える一方、まだ食べられる食材・食品が捨てられてしまうフードロス・フードウェイストの問題は依然解決していません。

こうした状況の中、生産から消費までの一連の流れ(フードチェーン)において、「作って終わり」「食べて終わり」というスタイルを続けていては、食の未来はありません。食べた後のこと(循環化社会)までしっかりと考えて、フードシステム全体を変革していくことが、いまの時代を生きる我々に課された喫緊の課題なのです。

変革の軸となるのは、「農業の持続性を高める」「食の付加価値を高める」「資源循環を考える」という3つの食のサステナビリティ(持続可能性)の実現です。農業の成長産業化、農業を志す人を増やしていくことが第一に必要です。また、食には、エネルギーを補給して体をつくるだけではなく、心に豊かさを与える役割もあります。健康寿命の延伸のためには、食のもつ価値を改めて認識するとともに、食べた後のこと(非可食部分や包装資材)を考える資源循環も重要です。私の記憶では、小さい頃一週間で家から出るゴミの量は今の半分以下でした。若い世代の人たちに負債を残さないためにも、ここ数十年で変わってしまった生活スタイルや社会のシステムをもう一度見つめ直す必要があると思います。

02社会を支えるインフラとして、国家プロジェクトでukabisを構築

ukabisは、「食のサステナビリティ」の実現に貢献する新たな社会インフラとして構築した情報連携基盤です。生産者や流通事業者、小売業者などに分散するデータを連携することで、サイバー(仮想空間)とフィジカル(現実世界)を融合し、フードシステム上におけるさまざまな“お困りごと”の解消や“あったらいいな”の実現を支援するスマートフードシステムの基盤となります。

民間による協調領域として食の未来を見据えた国家プロジェクトで構築された点に、大きな意義があります。ukabisが可能にするのは、フードシステムのデジタル化、情報の流通、食のトレーサビリティや精密出荷予測などのビジネス効率化だけでなく、こども食堂と食材在庫をマッチングし、食材食品を有効に活用する取り組みがあります。ukabisからマッチングシステムにデータを渡し、生産者や団体、企業からの食材情報を閲覧できるようにします。こども食堂の運営事業者は、その情報を元に、出荷や配送を依頼します。双方をつなぐことで、フードロスを削減するとともに、食の豊かさにも貢献することが大いに期待されています。

地域の中で、思いをもって活動している方々が、デジタルを通じてつながることができる。そして、実社会で役立てられる。そうした「つながる仕組み」を構築できることが、ukabisの最大のメリットであり、最大の意義と考えます。

03ukabisを使って、小売店や消費者に語りかけてほしい

ukabisには、生産から消費、リサイクルに至るまでのフードチェーンに関わる方々に登録していただき、参加いただきたいと願っています。店頭でまとめて積まれている野菜一つひとつにも、作り手の思いがこもっています。どのように育て、どのような気持ちで箱詰めして出荷しているのか消費者に伝えたいことはたくさんあるはずです。また、おいしく食べられるにもかかわらず、大きさや形、見た目など外観だけで廃棄されてしまうことが少なくありません。そうした情報や生産者の思いが届けば、買いたいと思う消費者は少なくないはずです。

ukabisはそういった作り手と買い手のつながりも実現します。消費者も、日頃感じている疑問や思いを農家さんと語り合えれば、同じ食材であっても見え方が変わるかもしれません。また、得られたデータを農業経営にいかすこともできます。スーパーなどの小売店が参加することで、生鮮品の新たなマーケティングが生まれる可能性もあります。生産者や流通事業者、消費者それぞれの思いが理解され、共感が生まれていくのではないでしょうか。こうした双方向の情報通信を可能にするのも、ukabisの大きな役割です。

04あなたの思いとアイデアが、未来を変える力になる

現状のままでは、食の未来は決して明るいとはいえません。2050年には世界人口が約97億人に達し、温暖化によって異常気象が異常ではなくなる中、現在よりも2倍近い食料生産が必要になると予測されています。

その未来を、人間の知恵でどう変えていくのか。鍵となるのがデジタル技術とバイオ技術です。デジタルの力でスマートフードシステムを実現させ、バイオ技術で地球環境に負荷の少ない食料生産を加速させる。そして、それぞれのプレイヤーがukabisを通じてつながり、共感し、相互に協力する。そんな未来を描いています。
PCのOS同様に、ukabisは縁の下の力持ちのような存在です。どのように使うかは、まだまだ未知数です。利用者と双方向でコミュニケーションをとりながら、完成度を高めていきたいと考えています。

そのためにも、多くの方々に参加いただくことを願っています。ぜひ一度試しにukabisにアクセスいただければと思います。「もっとこんなことができたら」というアイデアも大歓迎です。思いを寄せ合い、力を合わせて、食の未来を創っていきましょう。