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露地野菜の精密出荷予測システム

農研機構 野菜花き研究部門 佐藤文生、菅原幸治
農研機構 農業情報研究センター 石原光則、斎藤岳士

取り組み紹介2022-06-20

ukabisはデータ連携により、流通や生産ユーザーに対して、さまざまな形で有益なサービスが提供可能になります。今回は、ukabisとの連携が進められているSIP共同研究グループで開発中の精密出荷予測システムについて、現在の連携状況と展望をご紹介します。

外食や中食向けとして近年需要が伸びている加工・業務用野菜の生産では、一般に取引先との間で出荷契約を取り交わし、契約に沿って定時・定量出荷することが求められています。一方、露地野菜の生産では、気象条件の影響で生育期間や収穫量が変動しやすいことから、収穫過不足の発生が直前まで把握できない問題があり、欠品や圃場廃棄の原因となっています。

SIP共同研究グループで開発している精密出荷予測システムは、これまで生産者の勘や経験に頼っていた収穫予測を、気象データに基づいたシミュレーションにより自動で、かつ、正確に行うことが可能です。出荷時期・数量を事前に取引先と共有して需給調整のリードタイムを確保することで、この問題の解決に貢献します。

精密出荷予測システムでは、圃場の作付記録(作付日、作付面積)を入力すると、農業データ連携基盤(WAGRI)で提供している「メッシュ農業気象データ」から取得した気象データに基づいたシミュレーションにより、圃場毎の収穫時期・数量の予測情報を作付開始時より提供します。

生産者や農業団体など産地側のシステムユーザーは、収穫予測情報をもとに、どの取引先に、いつ、どれだけの数量で出荷が可能なのかを判断し、その情報をシステムに入力することで、ukabisを介して取引先である流通側ユーザーに出荷予測情報を提供できるようになります。

生産現場では、JAをはじめとした全国の約15生産団体が産地側テストユーザーとして参画してキャベツやレタス生産を対象に実証試験が進んでいます。この取り組みでは、予測情報を踏まえた収穫計画の策定で、適期収穫による単収向上や採り遅れによる圃場廃棄の回避などの経済的な効果が認められています。

現在、流通、消費現場へのシステム利用の実証試験に向けて、ukabisに実装予定の出荷予測情報提供APIを流通側ユーザーが活用するためのビューアーの開発が進んでおり、すでにモックアップ用アプリにて動作の確認、画面遷移が確認できます。この流通側ユーザーによる実証実験では、ベンダーとともに、仲卸・小売業者、カット野菜加工工場、保険会社などと協力し、出荷予測情報の具体的な活用方法の検討を進めます。

精密出荷予測システムによって産地の出荷予測情報が、フードチェーン全体に行き渡るようになると、需要喚起のための販売促進や冷蔵施設を活用した一時貯蔵など流通量の平準化、価格の安定へ向けた対策を事前にとることができます。また、物流では出荷量に合わせてトラックやパレット、コンテナを手配することで、効率の向上やコスト低減が見込めます。
さらに、生産者が持っている圃場の栽培管理情報なども合わせて提供できるようになることから、トレーサビリティの強化が図れ、小売、外食産業はもちろん、消費者までをカバーした多くのステークホルダーがメリットを得られる仕組みが生まれます。