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青果の輸出拡大に必須となるukabisと現場の仕組みづくり

公益財団法人流通経済研究所 佐藤 正雄

取り組み紹介2022-09-07

国産青果の輸出拡大を目指し、アジア向けにはフードチェーン情報公表JASとukabisを活用したトレーサビリティ輸出実証を、米国向けにはFDA食品安全強化法の新たなトレーサビリティ規則に沿った越境EC輸出実証を行います。流通経済研究所 佐藤正雄氏に聞きました。

2018年から積み重ねられたマーケット別の輸出実証

世界市場でニーズのある産品を輸出しマーケットを開拓、拡大していくという方針を政府が打ち出しており、その具体化のために国産食品輸出に積極的なWismettacフーズを中心に2018年から5年間にわたって様々なテーマを設定して輸出実証に取り組んできました。
アジア向けトレーサビリティ輸出実証では、海外市場での偽物対策、物流品質向上を重視し、2018年に海外動向調査、2019年に輸出用標準コードの整備、2020年に輸出トレーサビリティキャリア(QR、RFID等)の実証比較、ブロックチェーンの活用、コードの自動読み取り装置による効率化、2021年にはフードチェーン情報公表JASとukabisへの対応準備を行いました。
米国向け越境EC実証では、2019年に米国市場調査・検討・計画、2020年に国産青果の越境EC輸出、2021年には新たに設けられることが発表されたFDA食品安全強化法の対応準備を急ぐとともに、エアラインの協力を得た輸送検証を行いました。
青果で重要となる鮮度保持については、2021年に理化学研究所が開発中の小型センサーを用いて、棚持ち日数、糖酸度、硬度評価を行っています。
国をまたいで非常に多くの関係機関、事業者、生産者の協力を得て、社会実装に向けた準備が急ピッチで進められてきました。

多品種の青果輸出にトレーサビリティデータ連携を構築し、物流と生産の品質の向上に取り組む

アジア向けトレーサビリティ輸出実証では茨城産カンショ(タイ向け)、熊本産イチゴ(タイ・香港向け)、青森産リンゴ(台湾向け)で行われました。
カンショの例では、産地個体識別管理を行う基本情報を整えるため、産地で出荷時に産品にひも付く生産者やその他の各種データおよび画像の取得を自動読み取り装置によって行い、ロガーを取り付け出荷します。輸出先国では入荷時にデータ・画像取得を行い、ukabisで情報連携できる仕組みとし、輸出先へ到着したカンショの品質を個別に把握できるようになりました。
この実証では一日1,000カートン規模の個体識別管理を実現し、作業効率、データ精度などを検証、トレーサビリティの実現によって個々の産品の情報を生産者へフィードバックできるようになり、生産者の品質意識の向上に良い影響を与えることができるなど、多くの成果を確認しています。

そのほかに、熊本産イチゴ輸出実証では市場での偽物対策に重点を置き、日本最大規模の輸出青果である青森産リンゴは出荷量が多いことから、トレーサビリティに関する生産者の負担を軽減させる試行を行うなど、課題を一つひとつ検証し解決する取り組みを実施しました。
米国向けには2023年1月に迫ったFDA食品安全強化法の新たな規則の施行に間に合うように施策の検証を進め、国を超えて輸送される産品の状態把握の精度を上げ、物流品質の向上に貢献する仕組みの検証が進められました。

今後の国産青果輸出に求められる大規模で細やかな輸出業務を高品質で実現するために、こうした輸出実証成果を実現したukabisが情報基盤として重要な役割を果たし、大きな成果を上げることが期待されます。