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野菜の総合的品質指標「デリカスコア」の開発

メディカル青果物研究所 取締役 研究所長 有井雅幸

取り組み紹介2022-10-14

野菜の中身(品質)の見える化を目指し、生産者から消費者まで、共通で利用できる指標の開発を十数年続けているのがメディカル青果物研究所です。野菜の総合的品質指標デリカスコアを開発し、業界全体で利用できる物差しとして提供しています。

野菜の中身評価を中心に据えた総合的品質指標の開発

メディカル青果物研究所はデリカスコアの精度を高めるために、多様化する野菜のニーズとシーズを取り込んでおり、非常に多くの産地や取引先と協力関係を作り上げています。2020年には産地は25道府県68か所にまで増え、トマトだけでも5,000を超える検体を年次ごと、産地ごとに調査しデータを収集しています。

メディカル青果物研究所はデリカフーズグループの1社で、デリカフーズは約800社の中食・外食産業向けに業務用カット野菜・ホール野菜の製造販売を手がける企業です。全国に17拠点を持ち、365日カット野菜を製造し約3万カ所の店舗に配送しており、東京事業所だけでも毎日100トンの野菜が納品されています。

野菜の国内生産量は約1,200万トン/年(一人当たり100kg/年)、その約1%をデリカフーズが手がけており、この大量の野菜を直接取り扱う業態を背景に得られた膨大なデータを元にデリカスコアは開発、構築されています。

デリカスコアは現在19の項目からできており、生産者からのシーズ発想(栄養素、機能性、美味しさなど品質重視)、マーケットからのニーズ発想(残留農薬、安全認証(GAP)など安全性重視)を採り入れています。

図 野菜の総合的品質指標「デリカスコア」​

野菜の中身の見える化に取り組む

デリカスコアはシーズ(品質)、ニーズ(安全性)に加えて、流通過程、栽培過程と多岐にわたる調査項目に基づいて算出されます。

調査項目が多岐にわたることから、産地との連携では訪問してヒアリングを行い、自社内にとどまらず専門機関と連携してデータを取得するなど、スコア化の手順も厳密に決められています。現在、開示されている19項目は大項目であり、それぞれに中項目、小項目が設定され、それら一つひとつについてデータを集め、評価を重ねています。

デリカスコアは生産者はもとより、流通、加工、販売、そして消費者が正しい情報に基づいて、野菜の中身を理解していけるツールとして価値のあるものです。

図 スコア化までの手順

また、SIPの取り組みで千葉大学・農研機構によって開発が進む鮮度センサー、近畿大学で開発が進められる青果物を原料とする加工食品の安全性確保のための衛生指標開発など、鮮度に関わる新しい評価軸が登場しており、ukabisとの連携を通してデリカスコアの鮮度指標の1つとして取り込めるように実証を担う活動も行っています。

デリカスコアは野菜の中身にこだわっており、品質に基づく評価がより一般的に活用できるようになることを目指しています。デリカスコアの普及・啓蒙を継続していくことは、日本の農業を活性化し、農作物の価値を高め、生産者の所得を増やし、今後の輸出促進にも役立ちます。また大きな課題であるフードロスを削減するためにも有効に活用できます。

中身の良い野菜、つまり栄養価が高く、抗酸化力を高める機能を持つ野菜を摂ることは健康につながります。科学的に検証された正しい知識がデリカスコアを導入・運用することで広まり、多くの人が健康に過ごせるようになることが最大の目標となります。 デリカスコアとukabisによる情報連携はその目標に沿った活動を直接支援していくことができると考えています。