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コンパクトで使いやすい光センサーの開発に成功

国立研究開発法人理化学研究所 光量子工学研究センター 光量子制御技術開発チーム チームリーダー 和田智之

取り組み紹介2023-01-13

センサー技術が大きく進展し、軽量でハンディーな光センサーの開発に成功しました。すでに実証実験がシャインマスカットとキャベツで実施され、同じセンサーで糖度や新鮮さを測れる汎用性の高い光センサーとなっています。

野菜や果物を壊さずに中身を測定するセンサーの開発

一般の方々が果物を購入するときの目安として、糖度の表示を参考することが当たり前になりつつあります。
糖度の測定には農作物を傷めることなく計測できる、非侵襲の光センサー技術が使われており、現在は糖度のほかにも、農作物の鮮度や機能性成分(栄養素)を測るための技術開発が進んでいます。

こうしたことが実現できるようになった要因の1つにセンサーそのものの技術革新があり、現在の光センサー技術は第4世代と呼ばれます。
どの世代の光センサーも基本的には強い光源で農作物を照らし、反射や透過してくる光を検知器と分光器を用いて計測するという技術が使われています。光源の種類や光の波長制御の進歩によって、第1世代から第3世代へと進化してきましたが、装置そのものは大きくなりがちで、光源が高価。また、なによりも種類の異なる果物や野菜ごとに、また何を計測するのかに応じて専用センサーとして開発する必要があったため、広く普及するには高いハードルがありました。

世界的に類似したものが存在しない第4世代の光センサー

しかし、第4世代の光センサーは1cm程のキューブに検出器と分光器の機能を持たせたデバイスを搭載し、白色光を出す小型化されたLEDの光源を組み合わせて用いることで、軽量でコンパクト、手のひらに乗るほどの大きさにすることができました。

また、第4世代のセンサーは白色光から出てくる、光のすべての波長を用いて検知し、分光器で分けることができるため、適応範囲が非常に広い性能を持ちます。
そして種類の異なる果物や野菜、何を対象とするセンサーとするのかは、検量線の設定によって変更できます。対象となる野菜や果物、測る目的に合わせた検量線を用意すれば、あらゆる農作物のさまざまな測定に対応できます。
例えばトマトを対象とした場合、色や固さを測るための検量線をつくる作業は約1週間です。他の農作物を対象とする場合も、目的に合わせて1つひとつ検量線を用意していくことで対応できるようになります。
このように非常に汎用性の高いセンサーができたことで、農作物に関わる生産、流通、販売などのさまざまなシーンで広く普及することが期待でき、また普及が進めば長期的にはコストも抑えられるようになるでしょう。

センサー開発の遷移と第4世代の光センサーの計測イメージ

第4世代の光センサーを用いたシャイニングマスカットの測定
第4世代の光センサーを用いたトマトの計測

将来的に第4世代センサーが広く活用され、ukabisが情報の集約先となると、非常に多数のセンサーから絶え間なく情報が流れ込む大規模なデータ連携基盤となるはずです。
そのときにはスマートフードチェーンの果たすべき重要な役割である、産地から消費者に安全な農作物を届けること、フードロスの削減、また農作物の価値をさらに高めることに大きく貢献できると考えています。

※今回開発された、青果物を非破壊で計測できる非侵襲の光センサーに対するお問い合わせについては、本ポータルサイトのお問い合わせフォームよりお願いします。
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