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新しいタイプのいちごの普及に合った種苗許諾管理を目指す

キーウェアソリューションズ株式会社 サービス企画部長 吉村 和晃
一般社団法人 種子繁殖型イチゴ研究会 事務局長 森 利樹

取り組み紹介2023-01-31

種子繁殖型イチゴ研究会は合理的で適切にビジネスが継続できる新しい種苗利用許諾の制度を模索しています。契機となったのは種子繁殖型で流通する日本では初めて品種である「よつぼし」の流通が始まったことです。

種苗利用許諾のデジタル化を推進

新しく開発された品種の農産物は、種苗を種苗利用許諾と呼ばれる形でライセンス管理し、権利を保護しながら、ステークホルダーである品種育成者権者(許諾管理者)と種苗流通業者、生産者がビジネスを行っています。

従来、紙媒体で管理されていることから、ステークホルダーに業務負担を強いていました。種苗のライセンス管理情報のデジタル化は負担を軽減し、効率化を進めます。
しかし、デジタル化の本当の価値は、これまでにない新しい考え方で管理ができるようになり、ビジネス全体が成長しステークホルダーが恩恵を受けられるようになることです。
こうした視点で新しい種苗利用許諾管理の検討に取り組んでいる団体の1つが、種子繁殖型イチゴ研究会です。

新しい品種の登場に合わせて、合理的な制度と仕組みを構築したい

契機となったのは新しい品種である「よつぼし」の流通です。「よつぼし」は種子繁殖型で流通する世界でも数例しかない貴重な品種で、日本では初めてのケースです。現在はステークホルダーとコンセンサスを形成している途上段階にあります。

いちごには栄養繁殖型と種子繁殖型という2つの繁殖方法があります。
従来のいちごはツルの先にできる子苗を増やす栄養増殖型であり、子苗は親株の分身(クローン)で同じ遺伝子組成を持つため、均一な株を得ることができるのがメリットですが、親株が病害虫やウィルスに感染していると子苗にも伝染してしまうというデメリットがあります。また、苗を販売したら販売先を把握していないと増殖を止める方法がなく、違法増殖や海外への無断流出を招くことが危惧されます。そのため、近年、契約栽培が拡がり始めており、契約栽培は苗を扱っている種苗流通業者や生産者を契約で把握し、契約外への流通が起きない仕組みになっています。その反面、契約管理が厳しすぎると市場が広がりにくく、市場が大きくなると事務負担が膨大になるという課題を持っています。

よつぼしの種子と果実

それに対し、種子繁殖型は、新しく登場したタイプで、増殖効率の良さ、病害虫やウィルスの感染をほぼ防ぐことができるというメリットを持ち、加えて、流通が容易なため取り扱いできる種苗流通業者の数が大幅に増えます。それにも係わらず、栄養繁殖できるといういちご本来の性質は依然持っているので、利便性が増すのと表裏一体で種苗管理の重要性も増すことになります。そのため、種子繁殖型の登場を機に種子繁殖型のメリットを十分に生かせる制度を整備する検討を進めているのが種子繁殖型イチゴ研究会です。

具体的には「よつぼし」の次に登場する新しい品種からは、まったく新しく考案された制度で種苗利用許諾管理の実現を目指して、現在は準備段階にあり、ステークホルダー間で議論を進め、コンセンサスの形成に注力しています。
新しい形の種苗利用許諾管理の制度が生まれ、それをより合理的に管理、運用していくための仕組みが必要になります。その時にukabisはステークホルダーが参加しやすく、使いやすい仕組みを下支えするプラットフォームになると考えています。