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ダイナミックプライシングによるシャインマスカットの販売を実証実験

GINZAFARM株式会社 代表取締役 飯村一樹

実証報告2023-02-03

首都圏でマルシェを展開するGINZAFARMは理化学研究所(以下理研)で開発されたセンサーで計測した糖度に基づいて、シャインマスカットでダイナミックプライシングでの販売に関する実証実験を行い、消費者の購買動向の把握、意見を採っています。

データによって農業にイノベーションを起こす

GINZAFARMはアグリテックを最大限に社会実装することを標榜し、生産者の利益を最大化するマルシェ事業、農業ロボットFARBOTを開発・販売するスマートアグリ事業の2つを柱とし、さまざまな企業と連携してスマート農業事業に取り組んでいます。
P-itシステムは農作物の流通の効率化を目指して展開されている販売の仕組みで、商品にRFIDタグを付け出荷管理をし、生産者の代わりにパートナーとして各種のマルシェ(販売所)への出荷をサポート。無人での販売が可能となるため、都心部のマルシェ、道の駅、直売所など多様な形態で販売機会を増やし、生産者の所得の向上を目指しています。
今回の実証実験は、理研によって開発が進められているセンサーによる情報とP-itシステムの運営を組み合わせた形で行いました。

3種類の糖度別にダイナミックプライシングを実施

2022年8月に2回、茨城県産のシャインマスカットを糖度によって3種類に分けたダイナミックプライシングによる実証実験を行いました。
理研が開発したukabisと連携できる分光センサーを活用し、「糖度・鮮度」のデータを圃場にて計測し、P-itのRFIDタグを付けた商品それぞれにデータを付与して出荷。翌日の販売当日には商品が東京・大手町マルシェに到着した時点で抜き取り測定を行い、糖度に大きな変化が見られないことを確認し、無人レジP-itへ糖度データを入力し、販売用シールを準備しました。

ukabisと連携できる分光センサーによる「糖度・鮮度」のデータ測定

ukabisと連携できる分光センサーによる「糖度・鮮度」のデータ測定

無人レジP-it

1回目、2回目ともに糖度別に3種類にわけ、3段階の価格を設定し、糖度別シールを貼りP-itの無人レジで販売。販売データを分析すると糖度表示をすることで売りやすくなる傾向が顕著にわかりました。また、ukabisを経由することでデータのセンサーでの取得、p-itレジへの連携がスムーズに実施できました。
また、購入者へのヒアリングの結果、自分の好みがはっきりしている人は糖度の差に基づいて商品を選択し、2種類で迷った場合は高いグレードを買う傾向が見られるなど、なにも情報がない時とは異なる行動が見られ、売り方の幅が広がったことがわかりました。糖度表示の販売で利益率が向上することを実証でき、効果は高いと評価しています。

ukabisはフードチェーンにおける様々なデータを連携する規模の大きな組織が運営する確たるプラットフォームであり、また、第4世代の白色LEDによる低価格で汎用性の高いセンサーが登場することで、さまざまなデータの測定が容易になります。こうしたデータ連携環境が整備されると「糖度・鮮度」のようなデータに基づく指標が当たり前のように活用されるようになります。
特に高級な果物は、消費者が「私が好きな味」をデータで判断できるようになると、すぐにでもそれに適した状態の果物が店頭に並ぶようになると思います。自分の好みのおいしさで食べられる農産物が従来にない高いレベルで消費者に届けられるようになるでしょう。