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米国食品安全強化法に対応したトレーサビリティの実現

公益財団法人流通経済研究所 佐藤正雄

実証報告2023-02-28

2023年に施行された米国食品安全強化法に則った輸出を実現するために、多くの事業者が連携した2国間をまたぐ青果物のトレーサビリティをukabis上で実現。流通経済研究所 佐藤正雄氏に聞きました。

米国食品安全強化法にいち早く対応

従来から米国は青果物の輸入を制限しており、日本から米国向けに輸出を実現していた作物は数品目に過ぎません。2023年からはFDAが主導した米国食品安全強化法(FSMA)が施行され対応が必要となり、さらにハードルが上がっています。
米国食品安全強化法の要点は、トレーサビリティ記録の義務化にあります。輸出事業者は出荷から納入までのプロセスを追えるトレーサビリティに関するデータを収集・共有し、FDAからの要請に応じて提出できる体制を整えなければなりません。
この条件をクリアするためには、産地、食品卸、国内配送、米国配送など、関連する事業者間で緊密に連携し、ラストワンマイルまで追跡できることを実証する必要がありました。

今回はジャパンクオリティを標榜し、すべて日本企業による取り組みとし、ukabisをデータ連携基盤として活用。日米をまたいで多くの生産者、物流、関係機関などが1つのチームとなることで実現できました。
佐賀県「イチゴさん」、静岡県「クラウンメロン」の輸出業務に九週農産物通商、米国輸入元にAKTトレーディング、米国内配送にヤマトUSA、リパックが米国での個別配送、そしてEコマースをWismettacフーズが担当し、流通経済研究所がukabisの運用と実証の取りまとめを行いました。2023年春からの実運用ではSBIトレーサビリティがツールの提供で参画する計画もあり、たいへん多くの企業が密接に連携しています。

ukabisと産地から北米消費者までの輸出サプライチェーン

トレーサビリティデータ(温度、衝撃、タイムスタンプ)を集約、過程はダッシュボードで表示、最終的にはレポートとして出力

輸出に関する輸送時の逐次データ収集と記録保持を確立

条件の厳しい米国食品安全強化法に即したデータ収集ができるように、各種ロガーを5種類用意し、産地での出荷から国内輸送で空港へ、米国の空港で受け入れ後、米国内での輸送、個別配送、購入者に納入というという2国間をまたぐ取引で、位置、温度、衝撃などを時間単位ですべてデータとして収集し、トレーサビリティ情報として整理、保管しました。これによって、日米をまたいで輸出される青果物の状態把握の精度があがり、輸送品質の可視化が格段に向上しました。

米国食品安全強化法への対応を確実なものにしたことで、2023年春以降のビジネス展開に大きな弾みが付き、青果の種類も順次増やしていく予定です。
また、今回得たノウハウは他の国や地域でも求められるものであり、ukabisがデータ連携基盤としてもたらす価値を明確に示す先行事例になりました。ukabisが青果物の輸出事業において重要な役割を果たし、今後、ビジネスの成長に大きく貢献することを期待しています。

ukabis活用により、国内産地出荷から福岡・羽田経由、LA通関、米消費者配送までの輸出サプライチェーン輸送環境をリアルタイム視認可