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流通側ユーザーが自在に使える出荷予測情報

農研機構 野菜花き研究部門 菅原幸治、佐藤文生
農研機構 農業情報研究センター 石原光則、斎藤岳士

取り組み紹介2023-03-07

圃場の作付記録とメッシュ農業気象データでシミュレーションし収穫予測する精密出荷予測システムの試験運用を開始し、生産者が実証を始めています。次いで流通側ユーザーにukabisを通して出荷予測情報を提供できるように準備が進んでいます。

複数の精密出荷予測システムが登場、生産者が活用する段階へ

SIP共同研究グループで開発された生育モデルを用いた精密出荷予測システムは、既にいくつかのシステム提供会社が試験運用を開始し、先進的な生産者の間で実証が進んでいます。
精密出荷予測システムは、圃場での作付日、作付面積などの作付記録を入力することで、農業データ連携基盤(WAGRI)を活用して生育モデルとメッシュ農業気象データに基づいたシミュレーションを行い、自動で、かつ、正確に圃場ごとの収穫時期・数量の予測情報を提供するものです。
生産者や農業団体など産地側のシステムユーザーは、収穫時期・数量を事前に取引先と共有することで、需給調整のリードタイムを確保できるようになります。

精密出荷予測システムは生産者側での活用を念頭に設計・開発され、各社から提供が始まっていますが、流通側ユーザーからの期待も大きいことから、生産者、流通の両方のユーザーにとって利用しやすい仕組みとするため、検討が続けられてきました。

流通側ユーザーが専用ダッシュボードを持てる仕組みへ進化

活用範囲を広めるために、流通側ユーザーのニーズ調査を進め、また改めて生産者側での使われ方を整理しました。その結果、方針として各社から提供される精密出荷予測システムがアウトプットする出荷予測情報の仕様を統一し、ukabisの出荷予測情報提供APIから活用できるようにすることを決定し、開発プロジェクトが進められました。
目指したのは、流通側ユーザーがデータを独自に組み合わせて、自社専用のアプリケーションやダッシュボードのようなイメージで活用できるようにすることです。
生産者の立場からは、ukabisを介して取引先である流通側ユーザーに、自ら設定した出荷予測情報をより容易に伝えられるようになります。

流通側で利用するダッシュボードの画面遷移のイメージ

実証実験では、精密出荷予測システムを提供するビジョンテックと、仲卸・小売などと連携し、具体的な利用方法や提供方法を検討しました。今後、本サービスの提供に向けた精密出荷予測システムの実装を完了させ、正式サービス化を進めます。

また、生産者が精密出荷予測システムを活用するために必要な作付情報などのデータ入力を支援するためのフレームワークの検討に入っており、生産者側、流通側を含め、システム全体として価値の向上に取り組んでいきます。

精密出荷予測システムの開発経緯はコチラ