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フードチェーン情報公表JASに則った米国向け輸出を検証

一般財団法人アグリオープンイノベーション機構 山田クリス孝介

実証報告2023-03-20

フードチェーン情報公表JAS規格に則って、海外輸出を実現するための実証実験が日本と米国の2国間で行われました。関わった事業者の輸出入手順のすべてで基準を満たしたことが確認でき、今後の運用に向けた準備が進展しました。 

フードチェーン情報公表JAS規格を海外輸出で活用する

フードチェーン情報公表JAS規格は「優れた産品を、産地から店頭まで、きちんと管理された方法で送り届けることを保証するしくみ」であるため、事業者が産品ごとに定められている条件に基づき、輸送・保管することが必要です。
国内の場合、事業者は生産者、卸売・仲卸、小売となり、輸送は一般的にトラックによって行われます。この間、温度と衝撃に関する必要なデータをセンサーによって測定・記録します。
これが海外輸出になると、2国間をまたぎ、事業者と手順が増えます。
産品は生産者からトラックによって出荷された後、陸送で空港に運ばれ、輸出事業者の手配で検疫、輸出手続きが行われ空輸されます。そして、他国の空港に到着すると輸入事業者による輸入手続きがあり、現地の配送事業者が受け取り、トラックで陸送し倉庫に納められます。その後、場合によっては小分けされて配送されるという手順となります。また、温度と衝撃をセンサーによって測定し記録する範囲が2カ国に分かれ、途中に空輸が含まれます。また鮮度を保つための包装(MA包装)を行う必要があります。

このように関係する事業者が多く、手順も増えるなかで、フードチェーン情報公表JAS規格で定められた基準を満たす必要があります。
今回は米国向け越境ECを実証の場として検証しました。

実証実験では静岡産クラウンメロンを米国の消費者に越境ECで届けた。産地で取りまとめられたクラウンメロンには輸出用の包装を施し、温度・衝撃を測定・収集するためのセンサーが付加され、米国までの陸送・空輸の期間をすべてトレースした。

センサーデータの確認、JASマークの付与は現地到着後に実施

現地に産品が到着すると倉庫などで輸送用梱包から消費者向けの個別梱包に変更されます。また、現地事業者は輸入の一般的な業務として、キズの有無など、外観や中身が出荷時と同等であることを確認します。
今回の実証では、ここで「JAS規格の適合判定」を行いました。 

センサー情報による判定

輸送時、保管時に産品のパッケージに同梱されたセンサーから取得した、温度や衝撃などのデータを参照し、規格が定める基準に適合していることを判定する。
センサーからのデータは場所や時間帯に応じて利用できる通信手段を用いて、随時ukabisに転送され、管理用アプリケーションで共有される。
したがって、判定担当者は必ずしも輸出先にいる必要はない。

今回の実証実験を通じて、フードチェーン情報公表JAS規格が定める基準に適合することが可能であることがわかりました。実際に規格に基づく格付けを行いJASマークを明示できれば、関わったすべての事業者が産品を優れた方法で取り扱ったことを海外でアピールできます。

産品のブランド価値を見える化し、付加価値を高めることを目指したフードチェーン情報公表JASが海外輸出で活用できることが確認でき、実際の運用に向けて大きな弾みがつきました。

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