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アジア向け青果物輸出実証、品質とトレーサビリティを担保する

公益財団法人流通経済研究所 佐藤正雄

実証報告2023-03-24

輸出実証では5年間にわたり多くの課題を検討してきました。2022年度は品質を担保するためのフードチェーン情報公表JAS規格、偽造防止のためのトレーサビリティの実証をアジア向けいちごの輸出で行いました。

5年に及ぶ取り組みで輸出トレーサビリティの実現を確実なものに

輸出実証では5年間に及ぶ継続した取り組みを行ってきました。2018年の計画立案から、トレーサビリティに必要とされる手順や利用できる技術、輸出用標準コードの整備、コードの自動読取装置での効率化など、実際のビジネスに即した実証を段階的に積み重ねてきました。
日本の産地と米国やアジアなどの海外輸出先を実際に結んで実施した青果物の輸出実証には国内外の複数のエアライン、物流や貿易の事業者、各種の先進的な装置や機器のメーカーなどから幅広い協力があり、2021年度にはフードチェーン情報公表JAS規格に沿った輸送品質の可視化を実証しました。

そして、いよいよ2022年度はアジア向けの青果輸出におけるフードチェーン情報公表JAS規格と真贋証明トレーサビリティを実際のビジネスに適用した実証を行いました。
これによって海外におけるフードチェーン情報公表JAS規格の本格的な活用による日本産青果物の正しい評価の獲得(信用の創造)、真贋証明トレーサビリティによる偽造防止の実現に大きく前進しました。
そして、これらはすべてukabisを活用することが前提になっています。

いちご「あまおう」を香港とシンガポールに輸出

実証は福岡のいちご「あまおう」を香港とシンガポールの2つの輸出先に、同時に空輸する形で行われました。いちごは福岡で集荷され、振動を軽減し温度を一定に保つために、発泡スチロール製パレットと全体を覆うクールガードを組み合わせた特別な輸送用パレットに積み込まれました。
同時に、フードチェーン情報公表JAS認証のためヤマト運輸、サトーの温度・衝撃データロガーを同梱。また、別途用意したトレーサビリティのためのRFID+QRタグを貼付。
香港向け・シンガポール向けに出荷作業が整った時点でukabisにデータが登録されました。
その後、福岡空港まで陸送され、空港にて輸出のための各種手続きが行われ、香港とシンガポールに空輸されました。

フードチェーン情報公表JAS(フードチェーン情報公表農産物)の認証の範囲と実際の作業

到着後、現地ではデータロガーを回収し、温度と振動の環境データなどをukabisに登録。
ukabis上で共有された日本での出荷データ、輸送中のデータ、到着後のデータを合わせて、確認作業が行われました。その後、規格に合格した場合にのみ使えるJASマークをプリンターで出力し、一つひとつのパッケージごとにラベルを貼付しました。
トレーサビリティ用のRFID+QRタグはスキャンされ、登録された出荷データと照合されることで、仕向先の規定に準拠した検品に活用されました。

ポイントは作業の負荷や現地環境による影響が、実際の農産物の輸出業務のプロセスに組み込まれ、一連の作業として検証されたことです。重要な輸出業務の品質の担保と偽造防止にukabisが果たす役割の大きさが明確になりました。