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フードチェーン情報公表JASの進展状況

慶應義塾大学 神成研究室

取り組み紹介2022-07-12

現在、生鮮食品は産地から消費者の手に渡るまでの流通行程におけるトレース情報や、鮮度・品質情報が十分に提供されていません。「フードチェーン情報公表JAS」はukabisを活用した認証によって、この課題の解決と産品の高付加価値化を目指します。

個々の産品にJASマークをつけ流通プロセスを証明

ukabisでは種苗情報、品質指標、栽培情報、トレース情報の管理を行いますが、品質指標、トレース情報に深く関わる取り組みが、2023年初頭の制定を目指している「フードチェーン情報公表JAS」です。

フードチェーン情報公表JAS規格は「優れた産品を、産地から店頭まで、優れた方法で送り届けることを保証する仕組み」です。農林水産大臣が産品ごとに定める規格に基づき、登録認証機関が規格の定める基準を満たす事業者に認証を与えます。
対象となる事業者は認証生産工程管理者(生産者)、認証流通工程管理者(卸売・仲卸、小売等)、認証小分け業者(小売等)に区分されます。フードチェーン情報公表JASの認証を受けると、認証事業者は店頭に並ぶ個々の産品にJASマークをつけることによって、産品の生産・流通プロセス、事業者の取り扱い方法を証明できるようになります。

「フードチェーン情報公表JAS原案作成検討会資料」をもとに作成

「フードチェーン情報公表JAS原案作成検討会資料」をもとに作成

例えば長野県で栽培されたレタスを0時から収穫し、同日13時には大阪の小売店舗で販売する「今朝採りレタス」の実証実験では、レタスに個別識別コードを付与し、複数の小売店の店頭で、生産地からの出荷時刻や、流通行程において取得した品質情報を、ビューアーで確認することができました。
商品に添付されるラベルにはJASマークや個別識別コードの他、朝採れであること、流通過程の情報で予冷・低温管理がなされていることなども明記することができます。

産品のブランドを見える化し、高付加価値化を実現

フードチェーン情報公表JASを制定することで実現したいのは、産品の「ブランド価値を見える化」し、付加価値を高めることです。例えば贈答品に用いられる高額の優れた産品には偽物が出回ることが往々にしてあります。価値のある商品を贈りたいという消費者が産地・鮮度・品質に関する情報を確認し、価格にふさわしい優れた品質を備えた商品であることを納得して購入できるようにすることで、高付加価値化を実現し、すべての生産・流通関係者にメリットがある形を目指します。

現在、フードチェーン情報公表JASは、農産物3品目(レタス、メロン、ブドウ)について農林水産省への申し出に向けた準備が進められています。
2022年7月中に設立される新団体から申請が進められ、2023年度中の規格制定を目指します。その後、イチゴなどについても規格原案の策定に向けた準備が進められる予定です。

ukabisの持つ農産物・食品のデータ連携基盤としての能力と、フードチェーン情報公表JASによって、すべての関係者が農産物等の高付加価値化に貢献し、その恩恵が受けられる仕組みづくりを進めていきます。

出典)株式会社栄農人提供資料に加筆

2022年7月25日(月)に「フードチェーン情報公表JAS」に関するフォーラムを開催いたします。
現地開催に加え、Zoomウェビナーによるオンラインでの参加も受け付けしております。
フォーラムに関する詳細および参加申し込みは、こちらをご参照ください。
皆さまのご参加をお待ちしております。